創業計画書と自己資本

当然ですが、自己資本(自己資金)が多い方が創業融資だけでなく開業後に融資が必要になった場合でも有利です。特に日本政策金融公庫で有利な制度である、無担保・無保証で創業融資を受けるための新創業融資融資制度では、創業資本の10分の1が基準となっています。ただし、これを利用して見た目だけ多く見せかけているのではと疑われると融資を受けることが難しくなる場合があります。

創業計画作成の前提創業計画書は日本政策金融公庫HPにも記入例とフォーマットがありますが、創業計画書の作成の大前提として以下があります。

・記入例の真似をしない
・空白を作らない
・創業計画書の作成を外注丸投げしない

記載例を真似していると、その時点で融資が却下される可能性が高くなります。創業計画書は、開業に対する情熱と実現性を説明しなければなりませんので、空白があると大きなマイナスになります。

最後に重要なのは、創業計画書の作成をコンサルタントや税理士に外注丸投げしないということです。実際に融資担当者に質問を受けて受け答えしてその根拠を問い詰められるのは融資を受ける方本人です。何もわからず融資を外注丸投げすると、数字の根拠も説明できず、その時点で審査の状況がマイナスになります。

当然と言えば当然ですが、創業計画書を作成する際は、これらを理解し、専門家には表現しにくい部分をどのようにしていくかやどのような資料を準備するかなどの知識を仰ぎながら、創業計画書の作成を進めていきます。

自己資金の急増は見せ金と疑われ融資には不利創業融資を受けるために自己資本(自己資金)が十分ではないため、家族や友人などから一時的に資金を借りて通帳に入れるような行為は見せ金と融資審査ではすぐに疑われます。サラリーマン時代にコツコツとお金を貯めて資金が増えているのであれば良いですが、いきなり通帳に多額の金額が入金されていれば間違いなく疑われます。

また、タンス預金も出所が明らかではなく融資を受ける際の自己資本(自己資金)としては難しいでしょう。

同業種で経験を積み、貯金していれば融資は有利新創業融資制度で創業融資には10分の1以上の自己資本が必要という条件があるのは起業への本気度があるか、起業する業種で経験を積みながら貯金をしているかを知る意味もあります。

それを示すかのように新創業融資制度の条件には、自己資本の要件のみならず

2 雇用創出、経済活性化、勤務経験または習得技能の要件として
(1)雇用の創出を伴う事業を始める方
(2)技術やサービス等に工夫を加え多様なニーズに対応する事業を始める方
(3)現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方
(ア)現在の企業に継続して6年以上お勤めの方
(イ)現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方
(4)大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方
(5)産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援事業を受けて事業を始める方
(6)地域創業促進支援事業による支援を受けて事業を始める方
(7)公庫が参加する地域の創業支援ネットワークから支援を受けて事業を始める方
(8)民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方
(9)既に事業を始めている場合は、事業開始時に(1)~(8)のいずれかに該当した方

として、融資対象者の条件に一定の経験を積んでいることを求めています(雇用の創出を伴う事業を始める方という場合も新創業融資制度に含めているのは、雇用創出という意味があるためです)。

その点、同業種で経験を積み、起業できるような経歴、創業に備えた貯金などを行っていれば自己資本の要件を満たすのみならず、事業計画書でも記載することに困ることも少なくなるでしょう。また、このことからも見せ金やタンス預金が融資に不利であることが分かるかと思います。

担保、保証人がいれば融資には有利担保・保証人の存在は見せ金とは反対に創業融資にとっては有利に働きますが、新創業融資融資制度のような無担保・無保証人の方向けに対応している融資制度も存在しているので、保証人や担保になる不動産がないからと融資をあきらめる必要もありません。

実行された融資のうち無担保融資で77.2%、無担保・無保証人の融資は27.4%となっており、保証人なしの融資も76.8%となっています。そのため、無担保・無保証人であるからと創業融資をあきらめる必要もありません。

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